風俗でやっぱりヤクザは怖い

一九九二年に暴対法(暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律)、二〇一〇年以降にさらに厳しい都道府県の暴力団排除条例が順次施行されて、一般市民が暴力団と接点を持つことはタブーになっている。
暴対法には「みかじめ抖の要求」「用心棒代の要求」が禁止行為に列挙され、みかじめ料の要求は違法となっている。
何人かの風俗店経営者に話を聞いてみると、大抵は警察に書類を提出して、営業を開始するとすぐに地元の暴力団から電話がかかってくるようだ。
開業前に店側から挨拶に行かなければならない、ということはなく、勝手に向こうから近づいてくる。
暴力団は自分たちの利益に直接関わることなので、日頃から地元性風俗店の営業広告や女性の求人広告を隕なくチェックして、地元の性風俗絡みの現状を常に把握しており、新規開業の情報を察知すればすぐに電話をかけたり、訪問したりしている。
暴力団の営業活動である。
すぐに毎月のみかじめ料の支払い要求となるが、本来は要求するのも要求に応じるのも違法である。
しかし、暴対法や暴排条例を盾にとって拒絶しても、相手は暴力団。
「はい、わかりました」となるはずがない。
みかじめ抖を要求された時点でICレコーダーや隠しカメラなどで証拠を揃えて警察に被害届を提出すると、警察は「中止命令」または「再発防止命令」をその暴力団に出してくれる。
しかし、警察がしてくれるのはここまでで、暴力団が警察の命令ですんなり諦めるということはなく、「暴力的要求行為」で立件が可能という大きな被害に遭わないと警察は動いてくれない。
組によって反応はそれぞれだろうが、まず営業妨害の嫌がらせから始めるようだ。
暴力団への風当りが強い現在は、暴力的な被害を受ける可能性は低いが、最悪だと襲撃を受けるなども想定される。
常套手段はやはり、山崎氏の話してくれた客を装っての架空予約による営業妨害である。
店は、暴力団と付き合うことは違法だし、お金に余裕もないが、身の安全と営業を妨害されないためだけに毎月渋々お金を支払っている、というのが実態のようだ。
支払わなければ脅されて嫌がらせ、支払えば社会的制裁のある違法行為と、どの道実害をこうむることになり、非常に難しい選択となる。
運営する法人や個人の事業が性風俗店だけならば、要求通りに支払って波風をたてないのが賢明に思えるが、他事業を展開している法人や個人になると、みかじめ料の支払いは利益供与となって、「密接交際者」の烙印を押され銀行取引停止といった事態となる可能性もある。
地域の性風俗店が払っているのに単独で拒絶して暴力団と戦うとなっても、ただでさえ厳しい運営に嫌がらせをされたら経営は成り立たない。
また、暴力団はみかじめ料をもらっているからといって、店で起こったトラブルを無償で解決してくれるわけではない。
トラブルの深刻さ、被害の大きさによってそれぞれ異なる別途料金がかかってくる。
こうして関係を深めてしまうのは、これまた明らかな違法行為だから、暴力団に頼みごとをしない店がほとんどである。
暴対法、暴排条例と規制を強化しても、性風俗店を中心としてまだ暴力団へ金銭が流れている実態があることから、各都道府県の警察は「不当要求防止責任者講習」という制度を設けて、風俗営業、飲食店営業、銀行、金融機関、証券業、建設業など暴力団から不当な要求を受けやすい事業者に対して無料で対応方法を指南している。
制度の効果が表れて、事態が改善されることを願うばかりである。